認知症で通院が難しいとき、在宅医療は受けられる?訪問診療でできること
「最近、お父さん・お母さんが病院に行きたがらなくなった」「通院のたびに混乱して、付き添いがとても大変」——認知症のご家族を介護されている方のなかには、こうした悩みを抱えている方が少なくありません。通院が難しくなったとき、自宅で医師の診察を受けられる「訪問診療」という選択肢があります。このページでは、認知症の方が在宅医療を受けるための方法や、ご家族が知っておきたいポイントをまとめました。
お住まいの地域で訪問診療に対応しているクリニックを探せます
現在地から近いクリニックを探す認知症の方が通院困難になる理由
認知症が進行すると、それまで問題なくできていた通院が徐々に難しくなることがあります。主な理由として、次のようなものが挙げられます。
移動そのものの負担
足腰が弱くなったり、外出先で迷ってしまったりと、病院までの移動自体が大きな負担になります。タクシーや公共交通機関を使う場合も、乗り降りの介助や見守りが必要になり、ご家族の負担も大きくなります。
待ち時間での混乱
病院の待合室は、認知症の方にとって刺激が多く落ち着かない場所です。長い待ち時間の間に不安が高まったり、「なぜここにいるのか」がわからなくなって帰ろうとしたりすることもあります。待ち時間が長引くほど、ご本人もご家族も疲弊してしまいます。
通院への拒否
「病院に行く必要はない」「自分は病気じゃない」と通院を強く拒否されるケースも珍しくありません。無理に連れ出すことでご本人が興奮し、かえって症状が悪化してしまうこともあります。
こうした状況が重なると、必要な医療が途切れてしまうリスクがあります。そのようなときこそ、訪問診療を検討するタイミングです。
訪問診療で認知症の方に提供できるケア
訪問診療では、医師が定期的にご自宅を訪問して診察を行います。認知症の方にとっては、住み慣れた環境で落ち着いて診察を受けられることが大きなメリットです。
定期的な健康管理
血圧や体温の測定、全身状態の確認など、基本的な健康チェックを定期的に行います。高血圧や糖尿病といった持病の管理も、通院と同じように継続できます。
薬の処方・管理支援
認知症症状の進行を抑えることを目指す薬の処方や調整を行います。飲み忘れが多い場合には、一包化(1回分ずつまとめる)の提案や、訪問薬剤師との連携など、服薬管理をサポートする体制を整えます。
BPSD(行動・心理症状)への対応相談
夜間の興奮や徘徊、幻覚・妄想、暴言といったBPSDは、ご家族にとって大きな負担です。訪問診療の医師は、薬の調整だけでなく、日常生活での対応方法についてもアドバイスを行います。
ご家族への助言
介護をしているご家族に向けて、日々の困りごとへの対処法や、今後の見通しについてお伝えします。「この先どうなるのか」「いつまで自宅で見られるのか」といった不安に対しても、一緒に考えていきます。
他サービスとの連携
訪問看護、訪問介護、デイサービスなど、介護保険サービスとの橋渡しも訪問診療の重要な役割です。ケアマネジャーと連携しながら、ご本人の状態に合わせた生活全体のサポート体制をつくります。
利用を始めるには
訪問診療を始めるまでの流れは、大きく3つのステップです。
1. かかりつけ医に相談する
現在通院中の医療機関があれば、まずは主治医に「通院が難しくなってきた」ことを伝えましょう。訪問診療に対応しているクリニックを紹介してもらえることがあります。
2. ケアマネジャーに相談する
介護認定を受けている方は、担当のケアマネジャーに相談するのも有効です。地域の訪問診療クリニックの情報を持っていることが多く、サービスの調整もスムーズに進みます。まだ介護認定を受けていない場合は、お住まいの地域包括支援センターに相談できます。
3. 訪問診療クリニックを探す
お住まいの地域で訪問診療に対応しているクリニックを探す方法として、在宅クリニックナビをご活用いただけます。都道府県や市区町村から検索でき、対応疾患や訪問エリアなどの情報も確認できます。
地域の訪問診療クリニックを検索できます
現在地から近いクリニックを探すご家族が知っておきたいポイント
訪問時のご本人の不安への対応
医師が自宅に来ることに戸惑うご本人もいます。最初のうちは「近所の先生が様子を見に来てくれる」といった自然な説明をすると受け入れやすくなることがあります。回数を重ねるうちに、顔なじみの関係ができて安心される方も多いです。
薬の管理方法
認知症が進むと、ご自身での服薬管理が難しくなります。カレンダー式のお薬ケースを使う、1日分ずつ一包化してもらう、訪問薬剤師に管理を依頼するなど、状況に合わせた工夫ができます。医師や薬剤師に遠慮なく相談しましょう。
介護保険サービスとの併用
訪問診療は医療保険、訪問介護やデイサービスは介護保険と、制度が異なります。両方を組み合わせて利用することで、医療と生活支援の両面からご本人を支えることができます。ケアマネジャーと訪問診療の医師が連携することで、無理のないケアプランを組むことが可能です。
よくある質問
- 認知症でも訪問診療は受けられますか?
- はい、受けられます。認知症の方は通院が困難になりやすく、訪問診療の対象として多くのクリニックが対応しています。認知症の進行度にかかわらず、通院が難しい状態であれば利用できます。
- 本人が医師の訪問を嫌がる場合はどうしたらよいですか?
- 最初は抵抗を示す方もいらっしゃいますが、「健康チェックに来てくれる先生」として紹介したり、短時間の訪問から始めたりすることで、徐々に慣れていかれるケースが多いです。訪問診療の医師はこうした状況に慣れていますので、事前にご相談ください。
- 介護認定を受けていない場合でも訪問診療は利用できますか?
- 訪問診療は医療保険で行われるため、介護認定の有無に関係なく利用できます。ただし、訪問介護やデイサービスなどの介護保険サービスを併用する場合は、介護認定が必要です。まだ認定を受けていない方は、お住まいの地域包括支援センターで申請の手続きについて相談できます。
認知症の方の訪問診療に対応しているクリニックを探せます
現在地から近いクリニックを探す本記事は、在宅医療に従事する現役医師を含む監修チームが医学的内容を確認しています。編集方針・監修体制について|最終確認日: 2026年6月10日
情報提供について
本ページは認知症の方の在宅医療・訪問診療に関する一般的な情報提供を目的としています。症状や病状により適切な対応は異なります。実際の受診や治療については、医師・医療機関にご相談ください。
最終更新:2026年6月10日