在宅での点滴・注射・処置──訪問診療でどこまで対応できるか
「訪問診療って、薬をもらうだけではないの?」「点滴や処置は病院に行かないとできないのでは?」——在宅医療に対して、このようなイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。実際には、訪問診療では幅広い医療行為を自宅で提供することができます。本記事では、在宅でできる処置・検査の範囲と、訪問診療クリニックでの対応内容をご説明します。
在宅でできる主な医療行為
診察・検査
- バイタルサイン測定(血圧・体温・脈拍・SpO2)
- 身体診察(聴診・触診・視診)
- 採血(外部検査機関への検体送付)
- 尿検査(簡易検査・検体送付)
- 心電図検査
- エコー(超音波)検査 ※機材持参の場合
採血・検尿の結果は数日以内にお伝えし、必要に応じて処方の変更を行います。
点滴・注射
- 静脈内点滴(抗生物質・栄養・輸液など)
- 皮下点滴(高齢者の脱水補正などに有効)
- 筋肉内注射・皮下注射
- ワクチン接種(インフルエンザ・肺炎球菌など ※自費)
点滴は、入院しなければできないと思われがちですが、自宅での対応が可能です。「食事がとれず体力が落ちてきた」「感染症の治療で抗生物質の点滴が必要」といった状況でも、在宅で対応できるケースが多くあります。
処置
- 褥瘡(床ずれ)の処置・管理
- 尿道カテーテルの管理・交換
- 経鼻経管栄養チューブの管理
- 胃ろう(PEG)の管理・処置
- 気管切開の管理
- 吸引(痰の吸引)の指導と管理
- ストーマ(人工肛門・人工膀胱)の管理
これらの処置は、病院でなければできないと思われていることもありますが、多くは在宅でも安全に行えます。必要に応じて訪問看護師と連携し、医師と看護師が分担して管理します。
薬の管理
- 慢性疾患の処方(高血圧・糖尿病・心疾患・呼吸器疾患など)
- 医療用麻薬(疼痛管理・緩和ケア)
- 抗認知症薬・向精神薬
- インスリン(糖尿病の注射薬)の処方・指導
- ポリファーマシー(多剤服用)の見直し
在宅医療では、処方薬の整理も重要な役割です。複数の病院にかかっていて薬が重複・過剰になっているケースは珍しくありません。薬の種類を整理することで、副作用を減らし、飲みやすくする「処方の最適化」も行います。
在宅酸素療法の管理
COPD(慢性閉塞性肺疾患)や心不全など、常時酸素が必要な患者さまへの在宅酸素療法(HOT)の導入・管理を行います。機器の設置は医療機器業者が行い、医師が定期的に管理します。
総合的な診療ができる医師の役割
在宅医療では、内科全般にわたる知識と技術を持つ医師の存在が重要です。心臓・肺・腎臓・内分泌・消化器など、複数の領域を横断的に診られる医師であれば、複数の疾患を抱える高齢の患者さまにも「専門科を超えた総合的な判断」が可能です。たとえば、
- 心不全と糖尿病を合わせ持つ患者さまへの薬の選択
- 腎機能低下がある中での抗生物質の用量調整
- 認知症と痛みを抱える患者さまへの麻薬の適正使用
こうした複雑なケースでも、総合的な内科の知識を活かした適切な判断が求められます。また、連携先の病院への専門科受診・入院調整がスムーズに行える体制があるかどうかも、訪問診療クリニックを選ぶ際の重要なポイントです。
在宅では対応が難しいこと
在宅医療には限界もあります。以下は、病院への受診・入院が必要となるケースです。
- 手術が必要な場合
- CT・MRI・内視鏡などの精密検査が必要な場合
- 輸血が必要な場合
- 高度な集中治療(人工呼吸管理など)が必要な場合
このような状況が生じた際は、在宅医が速やかに病院への紹介・救急搬送の調整を行います。「在宅医がいるから病院に行けない」ではなく、「在宅医が橋渡しをする」というイメージです。
「うちの親に必要な処置は在宅でできる?」
「胃ろうがあるが、在宅でも対応できるか」「点滴が必要と言われたが、入院しなければいけないのか」——個別の状況についての疑問は、お近くの訪問診療クリニックにご相談ください。現在の状態をお聞きしたうえで、在宅で対応できるかどうかをお答えします。